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会社売却の税金計算方法|株式譲渡の所得税・節税策を解説

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結論から先に

この記事で分かること

  • 会社売却(株式譲渡)にかかる税金の種類と税率
  • 【シミュレーション】会社売却の税金計算方法
  • 会社売却の税金を抑えるための3つの方法
  • 会社売却後の税金申告・納税の手続き
  • 会社売却の税金に関する注意点

会社売却(株式譲渡)にかかる税金の種類と税率

中小企業のM&Aで最も多く用いられる「株式譲渡」の手法で会社を売却する場合、オーナー経営者などの個人株主が得た利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。 この所得は給与所得や事業所得とは分けて計算される「申告分離課税」の対象となり、税率は所得の金額にかかわらず一律です。

具体的な税率の内訳は以下の通りです。

  • 所得税: 15%
  • 復興特別所得税: 0.315%(所得税額の2.1%)
  • 住民税: 5%

合計税率は20.315%となります。 例えば、株式売却による利益が1,000万円でも1億円でも、適用される税率は原則として同じです。 これは、他の所得と合算して税率が上がる総合課税(最高税率 約55%)と比べて、税負担が抑えられる仕組みになっています。

【シミュレーション】会社売却の税金計算方法

会社売却でかかる税金は、売却金額の総額ではなく、売却によって得られた「利益」に対して課税されます。 この利益を「譲渡所得」と呼び、以下の計算式で算出します。

譲渡所得 = 売却価格(総収入金額) – 必要経費(取得費 + 譲渡費用)

そして、算出された譲渡所得に税率を掛けることで、最終的な税額が確定します。

税額 = 譲渡所得 × 20.315%

① 売却価格(譲渡価額)

売却価格とは、株式を買い手に譲渡した対価として受け取る金額の総額です。 M&Aの交渉を経て、最終的に株式譲渡契約書に記載された金額がこれにあたります。

② 取得費(株式の取得にかかった費用)

取得費は、売却した株式を手に入れるために要した費用です。 具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 会社設立時の出資金(資本金): 自身で会社を設立した場合の元手。
  • 他人から株式を購入した際の購入代金: 過去に第三者から株式を買い取った場合の費用。
  • 購入時の手数料や名義書換料など: 株式取得に付随して支払った費用。

【取得費がわからない場合】
創業から時間が経っているなどの理由で、設立時の定款や出資金の証明書類が見つからず、取得費が不明な場合があります。 その場合、税法上「売却価格の5%」を概算取得費として計上することが認められています。 しかし、この方法を用いると実際の取得費より大幅に低く計算され、結果として譲渡所得が大きくなり、税負担が重くなる可能性が高い点に注意が必要です。 例えば、1億円で会社を売却した場合、取得費はわずか500万円とみなされてしまいます。 可能な限り、当時の資料を探し出し、実際の取得費を証明することが節税の第一歩です。

③ 譲渡費用(売却のために直接かかった費用)

譲渡費用は、株式を売却するために直接支払った経費を指します。 これらを漏れなく計上することが、譲渡所得を圧縮し、税金を抑える上で重要です。 主な譲渡費用には以下のようなものがあります。

  • M&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)への手数料: 着手金、中間金、成功報酬など。
  • デューデリジェンス(買収監査)の対応費用: 買い手が行う調査に協力するために自社で専門家(弁護士や会計士など)に依頼した場合の費用。
  • 弁護士費用: 株式譲渡契約書の作成やレビューを依頼した費用など。
  • その他: 株式価値算定費用など、売却に直接関連する費用。

具体的な計算例

それでは、具体的な数値を当てはめて税額をシミュレーションしてみましょう。

【ケース1:基本的な計算】

  • 売却価格: 2億円
  • 取得費(資本金): 1,000万円
  • 譲渡費用(M&A仲介手数料など): 800万円

1. 譲渡所得の計算
2億円 – (1,000万円 + 800万円) = 1億8,200万円

2. 税額の計算
1億8,200万円 × 20.315% = 36,973,300円

この場合、納税額は約3,697万円となります。

【ケース2:取得費が不明な場合】

  • 売却価格: 2億円
  • 取得費: 不明のため、売却価格の5%を適用 → 2億円 × 5% = 1,000万円
  • 譲渡費用: 800万円

1. 譲渡所得の計算
2億円 – (1,000万円 + 800万円) = 1億8,200万円

2. 税額の計算
1億8,200万円 × 20.315% = 36,973,300円

この例では、たまたま資本金と概算取得費が同額だったため税額は変わりませんでしたが、もし実際の資本金が3,000万円だった場合、取得費を証明できなければ譲渡所得が2,000万円増え、税額も約406万円(2,000万円 × 20.315%)増加してしまいます。

会社売却の税金を抑えるための3つの方法

株式譲渡にかかる税金は、いくつかの方法を検討することで負担を軽減できる可能性があります。特に「役員退職金」の活用は、多くのM&Aで用いられる代表的な節税策です。

1. 役員退職金の活用

会社売却(株式譲渡)のタイミングでオーナー経営者が退任する場合、譲渡対価の一部を「役員退職金」として会社から受け取る方法があります。 なぜなら、退職金(退職所得)は株式譲渡所得よりも税制面で大きく優遇されているためです。

【退職所得の税制優遇】

  • 退職所得控除: 勤続年数に応じて、税金がかからない控除枠が設けられています。
  • 2分の1課税: 退職金から退職所得控除を引いた残額を、さらに半分にしてから税率を計算します(勤続年数5年超の場合)。
  • 分離課税: 他の所得と合算されず、退職所得だけで税額が決まります。

退職所得控除額の計算式は以下の通りです。

  • 勤続年数20年以下: 40万円 × 勤続年数
  • 勤続年数20年超: 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

例えば、勤続30年の経営者が5,000万円の役員退職金を受け取る場合、退職所得控除は1,500万円(800万円 + 70万円 × 10年)です。 課税対象は(5,000万円 – 1,500万円)× 1/2 = 1,750万円となり、これに所得税の累進税率が適用されます。 同じ金額をすべて株式譲渡益として受け取る場合に比べて、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

ただし、不相当に高額な役員退職金は税務署から否認されるリスクがあるため、役員の最終報酬月額や勤続年数、功績倍率(代表取締役で3倍程度が目安)などから算定される適正な範囲内で設定する必要があります。 どの程度の金額を退職金として受け取るのが最適か、専門家と相談しながらシミュレーションすることが不可欠です。

2. M&A仲介手数料などの譲渡費用を漏れなく計上する

前述の通り、M&A仲介手数料や弁護士費用などの譲渡費用は、課税対象となる譲渡所得を減らすための重要な控除項目です。 これらの費用を証明する契約書や領収書は、必ず保管しておきましょう。どのような費用が譲渡費用に含まれるか不明な場合は、M&Aの専門家や税理士に確認することが重要です。まずは自社の売却相場を把握し、どのような専門家のサポートが必要か検討するために、無料の相場診断などを活用するのも一つの手です。
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3. 事業承継税制の特例措置を活用する

事業承継税制は、後継者への株式の承継にかかる贈与税や相続税の納税が猶予・免除される制度です。主に親族内承継で活用されますが、一定の要件を満たせば第三者への承継(M&A)でも利用できる場合があります。ただし、適用要件が複雑であり、すべてのM&Aで使えるわけではありません。特に、株式を売却して現金を得る一般的なM&Aでは対象外となることが多いため、あくまで選択肢の一つとして、制度に詳しい専門家への相談が必要です。

会社売却後の税金申告・納税の手続き

株式を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、原則として確定申告が必要です。

確定申告の時期

申告と納税は、株式を売却した(引き渡した)年の翌年2月16日から3月15日までに行います。

必要書類

確定申告には、主に以下の書類が必要です。

必要書類

  • ✓確定申告書 第一表、第二表
  • ✓確定申告書 第三表(分離課税用)
  • ✓株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

このほか、M&Aの契約書や仲介手数料の領収書など、売却価格や必要経費を証明する書類を手元に準備しておきましょう。

会社売却の税金に関する注意点

取得費を証明する書類の保管

繰り返しになりますが、取得費を証明できなければ、売却価格の5%で計算された不利な条件で課税される可能性があります。 会社設立時の定款、出資を証明する通帳の記録など、取得費の根拠となる書類は大切に保管してください。

高額所得者への追加課税(ミニマムタックス)

2025年(令和7年)分の所得税から、年間所得が非常に高い富裕層を対象とした追加課税制度(通称:ミニマムタックス)が導入されています。 株式譲渡所得を含む合計所得金額が一定額(基準所得金額から3.3億円を控除した金額)を超える場合、その超過分に22.5%の税率を乗じた金額が追加で課税される可能性があります。 さらに、2027年(令和9年)分からはこの制度が強化される予定です。 非常に大きな規模のM&Aを行う場合は、この制度の影響も考慮に入れる必要があります。

専門家への相談

会社売却の税務は非常に専門的で、判断を誤ると数百万円、数千万円単位で手取り額が変わることもあります。 特に、役員退職金の金額設定や、どこまでが譲渡費用として認められるかといった点は、税務調査で指摘されやすいポイントでもあります。 必ずM&Aに詳しい税理士やアドバイザーに相談しながら進めるようにしましょう。信頼できる専門家を見つけるためにも、まずは自社の価値がどのくらいになるのか、客観的な相場を知ることから始めるのが賢明です。
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まとめ

会社売却(株式譲渡)によって個人が得た利益には、合計20.315%の税金がかかります。 この税額は、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を差し引いた譲渡所得を正確に計算することで、適切にコントロールすることが可能です。 特に、取得費を証明する書類の準備と、M&A仲介手数料などの譲渡費用を漏れなく計上することが重要です。

さらに、オーナー経営者が退任する場合には、譲渡対価の一部を「役員退職金」として受け取ることで、税制上有利な退職所得控除などを活用し、手取り額を最大化できる可能性があります。 ただし、これらの節税策は専門的な判断を要するため、実行にあたっては必ずM&Aと税務に精通した専門家に相談し、ご自身の状況に合わせた最適なプランを検討することが成功の鍵となります。

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